日記 019 泣きたくなる日

おれは結構泣き虫なんだけど、泣くことがすきなんだ。自分が泣けることが確認できるから。泣くのは感情の爆発であり、処理しきれない情緒の発作だ。でも、それだけ感じることができていると確認できるから。今日はなんだか泣きたくなる日だ。特になにが悲しいとか、思いつめたりとか、そういうことじゃなくて、ただ泣きたくなる日なんだ。泣くのは悪いこと?幼さ故に人は泣くのか?おれはそうは思わない、泣くのはごく自然な、人間的な行為だ。胸が張り裂けそうだ。頭がムズムズする。顔の表情筋がひくひくしている。でも、今日はなんだか泣けない。ただ、生きていることを確認するために泣きたいのに、まるでカラカラの雑巾をしぼっているかのように、泣くことができない。泣くことができないことに泣きそうだ、でも泣けないんだ。切ないんだ、なんだか。もし、おれがおとなになったとして、泣くことがなくなったら、それはとても悲しい。ぽうっと外を歩いていて、漠然と泣けるくらい感じたい。でも、今日は泣けない。あるのは、感じることを拒むような、けだるさだ。脳みそが感じるのを拒んでいる。心は泣いている。でも一滴の涙もでない。無力だ、とも思う。赤子は無力が故に泣くが、おれは無力が故に泣きたいのに。我慢しているわけでもないのに。泣きたいくらいにつらいけれど、いや、泣きたいからつらいのだ。どうして泣けないんだ。どうして爆発しないんだ。このつっかえてる涙はきっと、すごくしょっぱくて、濃い色をしていると思う。

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